デリケートゾーンのお悩み相談室

2022.02.07

膣の潤い不足で免疫力は低下!デリケートゾーントラブルのひとつ「カンジダ感染症」について

女性の膣の状態は、本人の体調だけでなく加齢やホルモンバランス、心の状態によっても日々変化します。今回は“膣の潤い”が体の免疫力に影響を与える理由と、デリケートゾーントラブルの原因である「膣カンジダ」などの感染症がなぜ起こるのか、その原因と対策について紹介します。

腸と似ている⁉︎膣内にも存在する善玉菌

私たちの腸の中には、ビフィズス菌や乳酸菌などの「善玉菌」が存在していて、腸内環境を最適に保つために必要ということは、よく知られていることだと思います。その善玉菌が優位になる腸にしていくことで、免疫力の向上をはじめ、健康の維持・増進が期待できます。
これは、女性の膣に対しても同じように考えることができます。

膣内のデーデルライン桿菌について

女性の膣の中には「デーデルライン桿菌(でーでるらいんかんきん)」という乳酸菌が棲んでいます。「デーデルライン桿菌」は乳酸を分泌して、膣内を雑菌が繁殖できない酸性環境下に保つことで雑菌の増殖を防ぎます。通常、おりものが少し酸っぱいようなニオイがするのはそのためです。

 

理想の膣は粘膜がたくさんの水分で潤っている状態

女性の膣は、デリケートな粘膜の表面を「粘液」によって常に満たされた状態にあります。自然に排出される粘液によって、常に湿っている状態が自然です。子宮頸部の表面と膣壁の腺から分泌されるこの粘液には、精子を受け止めて卵子へと届ける役割の他に、雑菌(異物)を体外へ排出し膣内環境を正常に保つ役割があります。

 

この“膣の粘液(膣分泌液)”の分泌が保たれなくなることで、女性の体にどのような影響が起きるのでしょうか。

 

「粘液力=免疫力」

膣内の潤いは、カラダの免疫力のバロメーターです。
例えば、睡眠不足や疲労倦怠感、生活習慣の乱れなどで慢性的にストレスを感じていると膣内が乾燥傾向になります。
理由は、ストレスによるホルモンバランスの乱れが生じるためです。そして、膣内が乾燥するとpHバランスが崩れ、膣内環境が悪化して膣炎になりやすくなってしまいます。

 

また、女性は40歳を過ぎた頃から女性ホルモンが減少し始め、閉経の前後では急激に減少します。閉経前後約5年間は体のほてりやイライラなどの、いわゆる「更年期障害」の症状に悩まされる人も多いです。

 

加齢による女性ホルモンの減少で「美肌ホルモン」とも呼ばれる「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の値も減少します。コラーゲンの生成を促すエストロゲンが減ることで、膣の中が乾燥しやすい状態へと傾いてしまいます。

 

それと同時に、潤いも低下し、膣内を酸性環境に維持することが難しくなってしまいます。普段、雑菌の繁殖を防ぐ役割をするデーデルライン桿菌などの常在菌のバランスが乱れ、いわゆる「自浄作用」も弱まってしまうので、雑菌が増えやすい条件をつくってしまうというわけです。

 

年齢を重ねるほど乾燥しやすくなるので、乾燥ケアはしっかり行うことが女性にとって大切な膣を守るためにも重要です。

 

膣の乾燥を放っておくと痒みやニオイなどの不快感だけでなく、膣炎などの病気を引き起こす可能性も考えられます。膣の“粘液力”を上げることで免疫力の維持・向上が期待できるので、予防としてもデリケートゾーンのケアや、膣トラブルについて知っておくことをおすすめします。

 

粘液力の低下は様々なトラブルを引き起こす

膣の潤いが保たれなくなることで、さまざまなトラブルが起こります。

 

例えば閉経後に多いといわれる「萎縮性膣炎」があります。これは膣壁が乾燥することによって萎縮して炎症を引き起こす病気です。萎縮性膣炎では、おりものの異常(色、におい)や性交痛などの症状が現れます。また、雑菌の繁殖により、おりものから魚の腐ったような悪臭がする「細菌性膣炎」という病気にも罹りやすくなってしまいます。それだけでなく、膣内で繁殖してしまった大腸菌が尿道に入り込むことで生じる「膀胱炎」の原因にもなります。

 

そして、厄介なのは「クラミジア感染症」や「淋病」、「カンジダ感染症」などのいわゆる“性感染症”です。これらは治療すれば改善する病気ですが、放っておくとHIV感染のリスクが上昇、そして母子感染の可能性があります。

 

これらの性感染症は「性行為をしていないと罹らない」と思う方も多いですが、実はそうではありません。
この中の「カンジダ感染症」は、粘膜が触れ合うことで感染するだけでなく“自己感染”する病気です。このカンジダ感染症(女性の場合は膣カンジダ)は、生活習慣の見直しで症状が改善し、感染を防ぐこともできます。

カンジダ感染症について

「膣カンジダ」は膣に常在するカンジダ菌という真菌が増殖することで発症します。女性の5人に1人が罹患する病気ともいわれており、感染症のなかでも比較的ポピュラーなので知っている人も多いと思います。

 

膣カンジダの主な症状は、外陰部の強い痒みです。外陰部の痒みは、炎症や疼痛(とうつう:ズキズキするような痛み)に変わることもあるので、痒みが気になり病院を受診することで発覚する、という人が大変多いです。また、おりものもポロポロとしたカッテージチーズ状に変化したり液体の中に固形物があるような粥状になったり、といった変化がみられます。

 

膣カンジダの主な原因は、ストレスやホルモンバランスの乱れ、妊娠、出産、糖尿病、抗生物質の使用などがあります。このことからも分かるように、カンジダ感染症はどの年代、どのライフステージにおいてもかかりやすい病気であるといえます。

 

膣カンジダの治療としては、抗真菌薬の膣錠(膣座薬)や塗り薬の軟膏を処方される事が多いです。
通常2~3日で軽快しますが膣錠の場合は約1週間使用します。比較的早く完治する病気ではありますが、免疫力が著しく低下している人の場合、全身に症状が現れる「全身性カンジダ症」を引き起こすこともあります。早めに対処するためにも、膣周りに激しく強い痒みを感じたら我慢せずに、できるだけ早く医療機関を受診することをおすすめします。

 

潤いを保つためにもデリケートゾーンケアは重要

膣カンジダをはじめとした感染症や膀胱炎などのトラブルを起こさないためにも、しっかりとしたデリケートゾーンのケアが重要です。

 

健康な膣は善玉菌が優位な環境であることが理想的です。この善玉菌が優位な状態を維持するためにも、潤いは必須です。膣内の良い菌まで取り除いてしまわないようにトイレの際やお風呂上りなどは過度に陰部を拭いたり触ったりしないよう注意しましょう。どうしても陰部の汚れが気になるときは、デリケートゾーンに適したソープで優しく洗い、優しくケアすることが大切です。

 

また、お風呂あがりにはお気に入りの香りのマッサージオイルでケアをするのも効果的です。アロマオイルや精油には、種類によってエストロゲンの分泌を促すものがあります。女性のカラダにプラスに働きかける精油成分が含まれたオイルを選ぶと良いでしょう。

 

また、寝不足が続かないように工夫することや、女性ホルモンと似た働きをする大豆製品や抗酸化作用の高いブロッコリースプラウトなどを積極的に摂取したり、食事から取り入れる方法も非常に有効です。

 

ストレスを溜めずに生活習慣を見直すことで、「粘液力」も「免疫力」もアップします。
まずは無理なく続けられることからチャレンジしてみましょう。

 

監修 薬剤師 中田早苗

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薬剤師/腸活・膣ケアサポート・ファスティング講師

中田 早苗

薬科大学卒業後、約7年間総合病院で病院薬剤師として勤務。その後、相談薬局にて予防医学の観点から薬を使わない健康法について患者指導を行い現在に至る。食事と生活習慣の見直しから得られる健康に興味を持ち、そのひとつとしてファスティングの魅力に感銘を受ける。便秘やアトピー、自律神経の乱れなどの悩みとファスティングに深く結びつきがあることを実感。現在までに100名以上のファスティングサポートを実施。

資格

薬剤師
ウエルネスファーマシスト(認定運動支援薬剤師)
ファスティングマイスター
美腸プランナー